日本人口学会第56回大会 2004年6月11日(金)-12日(土)
於 東京大学山上会館(文京区本郷)

シンポジウムとテーマセッションの題目及び内容

シンポジウム

題目:少子化社会のリプロダクティブヘルス

組織者:大塚柳太郎(東京大学)
座 長:池上清子(UNFPA東京事務所長)
    報告者:
  • 佐藤龍三郎(国立社会保障・人口問題研究所)
     「少子化社会におけるRHの意義と課題:総論および問題提起」
  • 中澤 港(山口県立大学)
     「ヒトの性・生殖過程の人口統計学的把握」
  • 早乙女智子(ふれあい横浜ホスピタル)
     「リプロダクティブヘルス・ケアと性教育・健康教育:保健医療の現場から」
  • 仙波由加里(お茶の水女子大学)
     「生殖技術の現状と倫理的社会的諸問題」
    討論者:
  • 阿藤 誠(国立社会保障・人口問題研究所)
  • 林 謙治(国立保健医療科学院)

趣 旨:
 1994年に開催された「国際人口開発会議(カイロ会議)」以来、脚光を浴びるようになったリプロダクティブヘルス(以下、RHと略す)は、途上国の問題と考えられる傾向が強いが、日本のような超低出生率の国においても、少子化問題への取り組みおよび人口学研究の進展にかかわる重要な問題が山積している。本シンポジウムは、RHという新しい概念にかかわる現状を把握し、研究および政策の両面においてどのように活用していけるかを共通課題とし、異なる視点にたつ4つの報告をもとに、新たな可能性を掘り起こすことを共に考えることを目的とする。

報告者と発表テーマ:
  1. 佐藤龍三郎(国立社会保障・人口問題研究所)
    「少子化社会におけるRHの意義と課題:総論および問題提起」

     RHがもつ内容はきわめて多岐にわたる。本報告は、RHに関する歴史的な経緯および国際的な動向にもふれながら、とくに日本のような先進国にいて、どのような問題がありどのようにアプローチすべきかを明確にする。そして、この報告につづく3つの報告の相互関連性を含め、シンポジウム全体の方向性を示すことも目的とする。

  2. 中澤 港(山口県立大学看護学部)
    「ヒトの性・生殖過程の人口統計学的把握」

     思春期から出産時期を経て老年期に至るヒトのライフコースで生起する、性と生殖に関する初経、性行動、結婚、出産、避妊、人工妊娠中絶、流産、不妊、閉経、性感染症罹患などを、人口統計学的に把握する方法を概観する。とくに、統計資料ならびに調査によって incidence やprevalence の把握、 life table やシミュレーションなど人口学的手法の活用に関する現状と問題点について、具体例をも交えて論ずる。

  3. 早乙女智子(ふれあい横浜ホスピタル)
    「リプロダクティブヘルス・ケアと性教育・健康教育:保健医療の現場から」

     カイロ会議でも示されたように、リプロダクティブヘルス概念の特徴の一つはリプロダクティブヘルス・ケアを含むことで、ミクロの視点、とりわけ女性と若者のリプロダクティブヘルスにかかわる質の側面(リプロダクティブライツとも関連が深い)が重視されている。このような状況を踏まえ、この報告では、HIV/AIDSを含む性感染症、避妊、その他の性・生殖に関連する保健医療ニーズとその課題、リプロダクティブヘルス・プログラムのあり方などについて、保健医療の現場からの報告を行う。

  4. 仙波由加里(お茶の水女子大学)
    「生殖技術の現状と倫理的社会的諸問題」

     生殖技術を含むバイオテクノロジーの急速な展開は、これまで考えられなかった大きな問題を投げかけている。すでに全出生の1%が体外受精に占められており、顕微授精も急速に増加している。また、ES細胞の利用や出生前診断の普及がおよぼす社会的な影響を考えることは、近未来的な視点からも必要になってきている。生殖に関する自己決定権はRHの基本要素の一つであるものの、技術の進展は一方では「自己決定」という問題にジレンマを生じているようにもみえる。このような視点から、少子化をめぐる政策のあり方とも関連づけ、倫理的・社会的な検討に関する報告を行う。
テーマセッション1

題 目:ジェンダーと人口問題

組織者:早瀬保子(日本貿易振興機構アジア経済研究所)
座 長:津谷典子(慶應義塾大学)
討論者:永瀬伸子(お茶の水女子大学)
    野上裕生(日本貿易振興機構アジア経済研究所)

趣 旨:
 1975年世界女性年以降既に四半世紀がたち、その間女性の地位向上とエンパワーメントに向けた議題が国際会議で取り上げられ、世界各国でも重点的な取り組みが行われてきた。1994年国際人口開発会議における「行動計画」では、人口政策にジェンダー的視点を取り入れる重要性が取り入れられた。出生、死亡、結婚・離婚、移動の人口動態や教育・雇用などの諸側面に、各国における社会的文化的な性差、即ちジェンダーが深く関与していることが、認識されるようになっている。

 本テーマセッションでは、先進国または途上国において、上記の人口現象(いずれか一つの事象でもよい)とジェンダーについての報告を歓迎します。
テーマセッション2

題 目:マイクロデータを用いた人口分析

組織者:安藏伸治(明治大学)
座 長:小島 宏(国立社会保障・人口問題研究所)
討論者:2名予定

趣 旨:
 米国ミシガン大学のICPSRや東京大学社会科学研究所SSJデータ・アーカイブなどによって膨大な量のマイクロデータが公開されるようになりました。これまで人口統計 という集合データを主に用いて研究行ってきた人口学の分野でも,最近は個票データを分析し,人口学的行動を説明する研究が多くなってきました。わが国に関しても1999年より開始された大阪商業大学と東京大学による「日本版General Social Survey (JGSS)」を初め,家族社会学会の実施している「全国家族調査(National Family Research of Japan)」,家計経済研究所の「消費生活に関するパネル調査」など人口変数を多く含んでいるマイクロデータが入手できるようになり,日本社会における結婚行動や家族形成,出生行動や世帯構造などを分析しえるようになりました。

 本テーマセッションにおいては,そうしたマイクロデータを用いて人口学的行動を分析した研究を御報告いただき,マイクロデータの有用性や今後の展開や要望を論議していきたいと思います。今後こうしたデータを利用し,研究をすすめてみたいと思われている方々にも有益なセッションになるのではないかと思います。是非,奮って応募頂けますようお願い申し上げます。
テーマセッション3

題 目:形式人口学的方法とその応用

組織者:稲葉 寿(東京大学)
座長:高橋重郷(国立社会保障・人口問題研究所)
討論者:金子隆一(国立社会保障・人口問題研究所)
    松下敬一郎 (関西大学)

趣 旨:
 人口研究は社会科学や生命科学等の様々な学問分野からのアプローチによって成り立っているが、その共通の土台はいうまでもなく形式人口学的な分析方法にある。これまでも人口学会では何回か形式人口学を主題としてセッションが設けられてきたが、今回再び形式人口学をテーマとするセッションを呼びかける所以は、それが我々の人口理解の要であり、何度でも立ち返って考えねばならないテーマであるからである。

 このセッションでは、形式人口学的方法に関わる報告は原則としてすべてとりあげるべき対象に含まれるが、今回はとりわけ、出生や死亡などの伝統的主題のみならず、広い意味で人口に関わる社会や環境の諸問題への形式人口学的方法の適用可能性、有効性を示唆するような、意外性のある応用研究を歓迎したい。このことは人口学を広く一般に普及していく上で重要なポイントであると考えられるからである。

 またセッションでの討論を実りあるものとするために、報告者は事前に報告論文ないしはそれに匹敵する内容説明を討論者へ知らせるようにお願いする予定である。

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First drafted August 30, 2000
Last revised December 09, 2003