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日本人口学会賞

本学会では1988年に日本人口学会賞授与規定を制定し、人口学分野における、会員の優れた業績に対して2年ごとに種々の賞を授与してきました。当初は学会賞と学会奨励賞の2つのみでしたが、1996年に学会特別賞を新設し、2002年より学会奨励賞を優秀論文賞と普及奨励賞に二分したことにより、現在は以下のとおり4つの賞を設けるに至っています。

日本人口学会第16回学会賞選考結果を下記の通り発表する。なお今回選考対象となったのは2015年と2016年の2年間における会員の業績である。

第16回(2018年)受賞者

1.学会賞
該当なし
2.優秀論文賞
<受賞者> 桃田 朗
<対象業績> 桃田 朗(2016)”Intensive and Extensive Margins of Fertility, Capital Accumulation, and Economic Welfare,” Journal of Public Economics, Vol. 133, pp.90-110.
<理由>マクロ経済学のモデルにおいては「子ども」はOverlapping Generations(OLG)モデルの中で扱われ、子ども数が減ることは、一人当たり資本蓄積を増やし経済厚生を改善させるとされることが多かった。これに対して本論文は、一国の少子化には、Intensive margin(母親が持つ子ども数が減少する)とextensive margin(子どもを持たない人が増える)との側面があることに注目し、新たに後者をモデル化する。すなわち子供を持たない世帯が増加すると何が起きるのかを分析した論文として優れている。子どもを持たない人が外生的確率的なショックで増えるとすれば、具体的には、「遺産動機」がないことにより、資本蓄積を減らす影響がある。これは人口の減少による1人あたりの資源の増加による資本蓄積促進効果を上回る可能性があるという指摘が独創的で興味深い。この場合、子どもを持たない世帯の方が子どもを持つ世帯に比べると子どものために自分のための消費を減らす必要がなく、消費の限界効用に差がでる。このことからたとえば子ども手当が経済厚生を改善すると示すこともできる。実際に日本は一家庭が持つ子ども数が減っているというよりは、一家庭が持つ子ども数がさほど変わらないまま、子どもを持たない世帯が増加している国であり示唆深い。このモデルは、子供を持つかどうかという個人の選択を扱ったものではないが、マクロ経済への影響を明らかにすることで今後の研究の方向性を提示するものであり、さらなる研究の発展につながる重要な研究と評価することができる。以上の評価に基づいて審議した結果、優秀論文賞に本論文を推薦するに至った。
3.普及奨励賞
<受賞者> 筒井 淳也
<対象業績> 筒井 淳也(2015)『仕事と家族-日本はなぜ働きづらく、産みにくいのか』中央公論新社(中公新書).
<理由> 本書は新書として図を多用しながら書かれていて比較的読みやすいが、人口研究者や労働研究者の通念にとらわれないような社会学的な視点や学術的分析も含まれている。実際、各種マクロデータから作成した図だけでなく、ISSPやJGSSといった社会調査のミクロデータを自ら集計して作成した図表も交えて国際比較や階層間比較に基づく少子化・女性就業の分析をした上で少子化対策・労働政策の分析・検討まで行っており、説得力のあるものとなっている。特に、前半では各種の未婚化の要因を整理するところから始めて仮説を設定し、日本の未婚化・少子化の要因を集計データの国際比較の視点から分析した上で、日本で有効な少子化対策まで提案しているし、後半でも未婚化・結婚との関連で女性の就業や格差について論じており、人口に興味をもつ一般読者にとって示唆に富むものとなっており、普及奨励賞にふさわしい著作と考えられる。
4.学会特別賞
<受賞者> 大塚 柳太郎
<対象業績>大塚 柳太郎(2015)『ヒトはこうして増えてきた-20万年の人口変遷史』新潮社(新潮選書).
<理由> 大塚柳太郎氏による著書『ヒトはこうして増えてきた』(新潮選書)は、ホモサピエンスが誕生してから現在までの20万年において、ホモサピエンスの生存戦略および環境の変化に応じて、人口指標がどのように変化してきたかを論じたものである。20万年の歴史において人口指標がダイナミックに変動してきたこと、そして現代の日本が直面する人口状況に至るまでにはホモサピエンスの経験してきた歴史の積み重ねがあることなど、本書で大塚柳太郎氏が意図したのは、現在の人口問題をより広い射程から捉えなおす試みともいえる。本書は、大塚柳太郎氏の人口研究の集大成を一般の読者向けに紹介するものであり、人口学のおもしろさを広く社会につたえる書籍として、学会特別賞を授与するにふさわしいと考える

過去の受賞者および対象業績


  学会賞 優秀論文賞(第8回より) 普及奨励賞(第8回より) 学会特別賞(第5回より制定)
*第7回までは「学会奨励賞」を示す
第1回(1988年) 小林和正『東南アジアの人口』 稲葉寿「多次元安定人口論の数学的基礎Ⅰ」、南亮三郎監修『人口論名著選集』
第2回(1990年) 大淵寛『出生力の経済学』 該当なし
第3回(1992年) 該当なし 該当なし
第4回(1994年) 大谷憲司『現代日本出生力分析』 該当なし
第5回(1996年) 山口喜一ほか編『生命表研究』 該当なし 伊藤達也『生活の中の人口学』
第6回(1998年) 岡田實・大淵寛編『人口学の現状とフロンティア』

Osamu, Saito, "Historical Demography," Population Studies

若林敬子『現代中国の人口問題と社会変動』

速水融『歴史人口学の世界』
第7回(2000年) 坪内良博『小人口世界の人口誌』 該当なし 岡崎陽一『日本人口論』ほか
第8回(2002年)

山口三十四『人口成長と経済発展』

加藤久和『人口経済学入門』

金子隆一「人口統計学の展開」『日本統計学会誌』 阿藤誠『現代人口学』 該当なし
第9回(2004年) 稲葉寿『数理人口学』 該当なし 速水融編『歴史人口学と家族史』 小林和正・南條善治・吉永一彦『日本の世代生命表:1891~2000年期間生命表に基づく』
第10回(2006年) 該当なし 鈴木允「明治・大正期の東海三県における市郡別人口動態と都市化:戸口調査人口統計の視点から」『人文地理』 早瀬保子『アジアの人口:グローバル化の波の中で』 該当なし
第11回(2008年) 該当なし 小林淑恵「結婚・就業に関する意識と家族形成-循環モデルによる検証-」『人口学研究』 和田光平『Excelで学ぶ人口統計学』 大友篤『続 人口で見る世界-人口変動とその要因』
第12回(2010年) 平井晶子『日本の家族とライフコース ―「家」生成の歴史社会学―』 林玲子「Long-Term World Population History: A Reconstruction from the Urban Evidence」『人口学研究』 鬼頭宏『図説 人口で見る日本史 縄文時代から近未来社会まで』 河野稠果『人口学への招待-少子・高齢化はどこまで解明されたか』その他
第13回(2012年) 津谷典子, Wang Feng, George Alter, James Z. Lee(他)『Prudence and Pressure: Reproduction and Human Agency in Europe and Asia, 1700-1900』 (2編)
鎌田健司・岩澤美帆「出生力の地域格差の要因分析:非定常性を考慮した地理的加重回帰法による検証」『人口学研究』
福田節也 "Leaving the Parental Home in Post-war Japan: Demographic Changes, Stem-family Norms and the Transition to Adulthood," Demographic Research (Max Planck Institute for Demographic Research)
人口学研究会(編)『現代人口辞典』 小川直宏(下記を含む一連の業績)
Shripad Tuljapurkar, Naohiro Ogawa, Anne H. Gauthier (eds.), “Ageing in Advanced Industrial States” (Riding the Age Waves ? Volume 3)
第14回(2014年) 阿藤 誠,西岡八郎,津谷典子(他)『少子化時代の家族変容 パートナーシップと出生行動』 (2編)
寺村絵里子「女性事務職の賃金と就業行動-男女雇用機会均等法施行後の三時点比較-」『人口学研究』
小池司朗「地域メッシュ統計の区画変遷に伴う時系列分析の可能性に関する一考察―測地系間・メッシュ階層間の比較から― 」『人口問題研究』
浜野潔『歴史人口学で読む江戸日本』 阿藤誠(下記を含む一連の業績)
阿藤誠ほか『少子化時代の家族変容 パートナーシップと出生行動』、『現代人口学』、『先進諸国の人口問題 少子化と家族政策』など
第15回(2016年) 澤田 佳世『戦後沖縄の生殖をめぐるポリティクス―米軍統治下の出生力転換と女たちの交渉』 (2編)
永瀬 伸子「育児短時間の義務化が第1子出産と就業継続、出産意欲に与える影響:法改正を自然実験とした実証分析」『人口学研究』
是川 夕「日本における外国人女性の出生力 ― 国勢調査個票データによる分析 ―」『人口問題研究』
松田 茂樹『少子化論―なぜまだ結婚、出産しやすい国にならないのか』 該当なし

選考理由アーカイヴ(第10回以降)

過去の選考理由


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First drafted August 30, 2000
Last revised on June 10, 2019